ファマディハナ 命をつないでいく祭り

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第13回はファマディハナについてです。祖先の遺骨を墓から出して弔い直す一種の改葬儀礼で、主にメリナやベツィレウなど中央高地の人々が行います。

 

第13回 ファマディハナ 命をつなぐ祭り

 

メリナ族のファマディハナ
ファンドリアナ郊外で行われたベツィレウ族のファマディハナ

 

6月から9月にかけて中央高地を旅していると、笛や太鼓の賑やかな音楽と共に、通りを練り歩く集団に出会うことがある。主に中央高地に住むメリナ族やベツィレウ族の人々が行う祭り、「ファマディハナ」の参加者たちだ。

 

彼らは親族が亡くなると、いったん仮埋葬を行い、数年たってから、ほかの先祖たちが眠る石造りの共同墓に本埋葬をする。その際に行われるのがこの祭りで、先祖の遺骨を全て墓から出し、新しい布で包んで弔い直す。墓を新築した時や、先祖が「寒いので布を変えてくれないか」と夢枕に立った時などにも行うという。

 

10年以上前に首都アンタナナリボの郊外で、ファマディハナを見た時のこと。親族たちは仮埋葬を終えた遺骨を担ぎ、共同墓に着いた。墓は5㍍四方はあろうかという大きなものだ。男性陣が入口から墓の中に入り、布に巻かれた遺骨を次々と取り出す。墓の前には遺骨がずらりと並べられていた。全ての遺骨が出されると、親族は一つ一つを抱きかかえ、大切そうに真新しい布で包んでいった。

 

先祖を包む布は「ランバメーナ」と呼ばれる。山繭の糸を紡ぎ織ったもので、非常に高価なものだ。金額は月給の何ヶ月分にも相当するという。それでも彼らは何年もかけてお金を貯めて布を買い、祭りの準備をする。彼らにとって、先祖は生きている子孫を見守ってくれる大切な存在だからだ。

 

全ての遺骨を墓に納めると、女性たちは遺骨を包んでいたゴザを激しく奪い合い始めた。その断片を寝床に敷いて寝ると、子宝に恵まれるのだという。ファマディハナは、先祖を弔う祭りであるとともに、命をつないでいく祭りでもあるようだ。