第8回は中央高地の手仕事の町アンブシチャについてです。首都アンタナナリヴから南へ220キロにあり、毎週土曜日に開かれる市には周辺の村で作られた見事な手仕事が集まります。その中には、ユネスコの無形遺産にも登録されたザフィマニリの人々の木彫品なども並びます。
第8回 見事な幾何学模様の彫刻 中央高地の手仕事の町
マダガスカルでは定期市が立つ町や村が多い。中でも見応えのあるのは中央高地のアンブシチャだ。ここは「手仕事の町」として知られ、毎週土曜の市の日には、ラフィアヤシを使ったかごや、野蚕で織った布、草で編んだカラフルな帽子やゴザなど、たくさんの品々が路上を埋める。どれも近隣の村で一つ一つ手作りされたものだ。
ぼくが気に入ったのは、2枚の板を組んで作った椅子だ。板には幾何学模様の彫刻が施されている。この町の南の山間に住むザフィマニリの人びとが作ったものだという。ぼくは、彼らがどんな暮らしをしているのかを知りたくなり、サカイヴ村を訪ねた。
アンブシチャから村までは、車と徒歩を合わせて約5時間もかかった。伝統的な木造家屋が整然と並んでいる。家は一間で、屋根裏があり、そこに焼き畑で作った主食のトウモロコシがずらりとぶら下がっていた。
「ザフィマニリの家は、釘は一本も使わず、木を組み合わせて建てます。100年は持ちますよ」と村人は語る。木でできた戸や窓枠を見ると、ここにも緻密な幾何学模様が彫られていた。衣装箱や蜂蜜を入れる小箱も手作りで、クモの巣を模した彫刻が施されている。見事な手技だ。彼らの木彫技術は高く評価され、ユネスコの無形遺産にも登録されているという。
女性はいろりの前で水草を編み、ゴザや帽子を作っていた。昔は木の皮から繊維をとり、布も織っていたそうだ。現在も生活道具の多くは手作りをする。
マダガスカルには今なお、手仕事に囲まれた温もりのある暮らしが残っている。