乗合自動車の旅 過酷な中 車窓や出会い楽しむ

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第14回はマダガスカルの乗合自動車、「タクシー・ブルース」についてです。最近では、首都とマジュンガやタマタブを結ぶ路線で完全座席指定の快適な車も出てきましたが、地方では今も、ぎゅうぎゅう詰めの車内に肩を寄せ合って座る車が走っています。決して楽な旅ではありませんが、庶民の暮らしを垣間見ることができ、時には面白い出会いがあります。

 

第14回 乗合自動車の旅 過酷な中 車窓や出会い楽しむ

 

南部のタクシー・ブルース
トゥリアラとムルンベを結ぶタクシー・ブルース

 

南西部の街トゥリアラにあるタクシー・ブルースの停車場に到着した。タクシー・ブルースとは乗り合い自動車のことで、マダガスカルでは最も一般的な交通手段だ。最近では日本製のバンが多く使われているが、未舗装道の多い南部では、ドイツ製の古い大型トラックが今も現役で使われる。

僕は南東部のフォールドーファンを目指し、座席や屋根をしつらえてあるトラックの荷台に乗り込んだ。道路状況にもよるが、丸1日以上掛かる道のりである。車内にはギターを高速で爪弾く南部の音楽が大音量で響き渡っている。

 

座席の間隔がとても狭い上に、両脇には大柄な女性が陣取り、身動きが取れない。屋根の上には、乗客の荷物や鶏まで山積みされ、完全に過積載状態だ。

 

席が埋まり、ようやく車が走り出した。やがてアスファルト道がなくなると、細かな赤土が容赦なく車内に入り込み、顔はすぐに泥だらけになった。夜になっても幌は開けられたままで、寒さで一睡もできない。揺れは想像を絶し、お尻の皮がむけるほどだった。

 

それでもタクシー・ブルースの旅はおもしろい。幹がとげに覆われた樹木の森が車窓に広がり、バオバブの風景に心が躍る。突如、腰布を巻いてやりを持ち、何百頭もの牛を引き連れて旅する男性が現れることもある。川魚や鶏の揚げ物など、その土地ならではの食事を味わう機会もある。そして何より、見知らぬ人と出会い、旅が思わぬ展開になるのも楽しい。

 

時刻表はなく、席が埋まらないと出発しないし、乗り心地も決していいとは言えない。車が壊れて荒野に放り出されることもある。しかし、そんな過酷な旅こそ深く思い出に残る。タクシー・ブルースには旅の醍醐味が詰まっている。