マダガスカルについて一昨年、新聞への連載の仕事をいただきました。タイトルは、『不思議の島 マダガスカル』。独自の進化を遂げた動植物、人々の暮らし、食、日本との関わりなど、全15回にわたってマダガスカルの魅力を紹介しています。今回から、掲載記事を随時転載していきます。マダガスカルに興味を持つきっかけになれたらうれしいです。第1回は、日本でも人気の「バオバブ街道」です。
第1回 息のむバオバブ街道 満天の星空も別格
アフリカ大陸の東に浮かぶマダガスカル島。地球儀で見ると小さく見えるが、日本の約1・6倍の面積があるとても大きな島国だ。日本人がマダガスカルと聞いて、最初に思い浮かべるのはバオバブかもしれない。ぼくもマダガスカル行ってみようと思ったきっかけは、雑誌でバオバブの写真を見たことだった。
マダガスカルは気候の違いから、中央高地、東海岸、西海岸、南部の4つの地域に分かれる。バオバブが生えているのは暑くて乾燥した西海岸とさらに乾いた南部だ。中でも圧倒的な風景が見られるのが、西海岸の町ムルンダヴァ郊外の「バオバブ街道」である。
町の中心部から赤土のでこぼこ道を車に揺られて1時間ほど走ると、道の両側に円柱型の巨大なバオバブが現れた。どれも高さは20㍍以上あり、太い幹が太陽の日差し受け金属のように輝いている。枝は木の上のほうにしかなく、まるで根っこのような形をした不思議な樹木である。
夕暮れが近づくと、外国からの観光客を乗せた四輪駆動車が街道沿いに続々と到着した。夕日に浮かぶバオバブを見るためだ。西日を受けバオバブがオレンジ色に染まると、彼らから次々と歓声が上がる。
ほとんどの観光客はこの風景を見てホテルに帰るが、さらに美しいのは日没直後だ。一瞬、西の空が明るくなったかと思うと、上空の雲が紅色に染まり、息を飲むような夕日に覆われる。やがて広がる満天の星空もまた忘れがたい。
1990年、初めて目にしたこのバオバブの風景に魅了され、その後、ぼくは何度もマダガスカルに通い続けている。