第9回は香料についてです。マダガスカルは知られざる「香料の島」です。東海岸地方はバニラの世界的な産地で、6月から収穫が始まります。クローブなども東海岸各地で作られています。西海岸を代表するのはイランイランです。リゾート島として知られるヌシべや対岸のアンバンザなどが産地として有名です。この地域ではカカオなども作られています。
第9回 知られざる「香料の島」 上品なバニラの香り
日本人が最も身近に接しているマダガスカルの産物は、バニラかもしれない。ケーキやアイスクリームなどに使われている香料だ。
バニラを初めて見たのは東海岸の町、サンバヴァを訪ねた時だった。ホテルの主人がとても親切な人で、郊外に広がるバニラ畑を案内してくれたのだ。バニラはランの一種で、木に巻きつけて育てられていた。東海岸一帯はモンスーンの影響で雨が多く、栽培には好適なのだという。
訪れた6月、バニラは長さ20㌢ほどに成長したさや状の果実を付けていた。それを摘み取り熱湯にくぐらせる。布で包んで2日間寝かせ、1週間ほど天日干しにすればできあがりだそうだ。黒光りする完成品を嗅がせてもらうと、実に上品な甘い香りがした。
「上質なものだけを選び、日本に送っています」と責任者は胸を張る。マダガスカル産バニラは現在、世界で生産される生バニラの8割を占めるとも言われる。
一方、西海岸にも世界に知られる香料がある。有名な香水「シャネル5番」などにも使われているというイランイランだ。マダガスカルは隣国コモロに次ぐ生産量を誇る。
11月、北西部の島、ヌシべでは、島中で栽培されているイランイランの木に黄色い花が咲き、甘く芳しい香りを放っていた。「精油は、朝摘みした花をゆっくりと蒸留して抽出します」と蒸留工場のガイドが語る。香水はこの精油に様々な香りを混ぜて作るという。この工場では蒸溜所の見学ができ、各種の精油を買うこともできる。
マダガスカルではこの他、カカオやシナモン、クローブなど、豊富な光量が生産されている。知られざる「香料の島」でもある。